高齢者施設とライフサイクルコスト

日経アーキテクチュア12-8号で、2020年東京オリンピックの施設整備についての記事が掲載されています。

最近では一般的にテレビや新聞でも報道されている施設整備費の高騰についての内容です。

 

 

どんな事においてもコストという問題は発生するものです。

そして、お客様はその物の価値を判断してお金を出して物を買います。

 

 

これは建設費も同じです。

 

 

「ライフサイクルコスト」という言葉があります。

これは、建物の建設費、運営費、一般管理費、保全費、修繕・更新費、解体処分費、税金・保険費用など、その建物にかかる全ての費用の事を言います。

 

 

一般的に建物は竣工後から解体されるまでに建設費の3〜4倍の費用がかかるといわれています。

事業を始める時に、目の前の建設費だけを比較しがちですが、実はその後にかかる費用のほうが大きいという事です。

 

 

今回の東京オリンピックの記事を見るとそれぞれの施設で大幅なコストアップが問題となっていると同時に、その後の施設利用や維持管理についても問題視されています。

 

 

新国立競技場の問題もそうですが、やはりライフサイクルコストを意識した費用対効果という意識が重要だと感じます。

 

 

これは私たちが普段関わっている高齢者施設でも同じです。

昨今の建設コスト高騰の問題はありますが、事業主の予算や補助金については事業としては最も大切なことです。

 

 

巨額な費用を投入して運営が成り立たなければ意味はありませんし、そこに入居する高齢者の安心は確保できません。

 

 

社会福祉法人が行う特別養護老人ホームなどの補助金事業においては事前協議の段階でチェックが入る要素になるのですが、設定された建設費で落札されるように仕様の調整やコントロールは設計者の判断によります。

 

 

当然ですが、事業主も設計者もより良いものを創りたいという気持ちがあるため、コストは上がり気味になります。

要望に対してコスト的に困難だと判断した場合は説明をしたうえで削減していく場合も多々あります。

 

 

全ては費用対効果だと思っています。

どこにどれだけのコストをかけるか。かけたほうが良いか。

という判断をしながら設計は進めていきます。

 

 

目先のイニシャルコストだけではなくランニングコストを含め、事業主、利用者にとって良い方向へと導いていければと考えています。




高齢者施設での防災意識

11月22日に発生した福島県沖での地震は震度5弱を観測した大規模な地震となりました。また、その後、津波警報や注意報が各地に発令され不安な朝を過ごした方も多かったと思います。

 

 

「津波」と聞くと、2011年の東日本大震災の衝撃的な映像が頭の中でよみがえってきます。

5年以上が経過していますが、あのときの衝撃はおそらく一生記憶に残る災害となりました。

 

 

「災害は忘れたころにやってくる」とは良く言われますが、まさにそのとおりだと思います。時間の経過とともに災害への意識は誰であっても薄れていくものです。

 

 

先日、とある本屋で手に取ってみました。

 

 

 

「東京防災」です。

この本は昨年9月に東京都が出した東京都で災害が起きた場合の対策やマニュアル、災害の知識などをまとめたものです。

 

 

完全東京仕様といいながら、どこに住んでいる方にも役にたつ情報ばかりです。

 

 

350ページほどの本ですが税込140円なので是非ご家庭に1冊は購入しても良いと思います。

 

 

その中で紹介している「今やろう4つの備え」では

1、物の備え

2、室内の備え

3、室外の備え

4、コミュニケーションという備え

 

という4つが上げられています。

 

 

保存食や水といった物の備えや室内の家具の転倒や防火対策、室外では避難場所の確認、安全な場所の知識など基本的には誰もが意識しがちな部分ですが、4つめのコミュニケーションというのはなかなか意識できていないのではと感じます。

 

 

しかし、特に高齢者や障がい者等、自力で避難することが困難な方には最も重要な備えであると私は思っています。

 

 

ご近所や地域自治会にはどのような方が住んでいて、避難に困る方がどのあたりに住んでいるか。普段からの挨拶やコミュニケーションで災害時の対応はかなり違ってくると思います。

 

 

心配してくれたり、気にかけてくれる人を出来るだけ近所の方に作っておくという事です。

 

 

この考えは福祉施設にも共通するところです。

普段から地域の方々とのコミュニケーションを取ることで助けて頂いたり、もしくは災害時の拠点として地域の方々が集まる場所にもなるという事です。

 

 

地域社会の中で、戸建て住宅に住む方々も、福祉施設に住むお年寄りや障がい者も普段からそんな意識でいる事で少しでも安心した生活が送れるのではないでしょうか。

 

 

一人暮らしの高齢者が増える中で、いつ発生してもおかしくないという地震への対策は今やるべき事はあるはずです。言っているだけでは何も変化はしません。

少しの行動が災害時の対応に大きく差が出てくると思っています。

 

 

そんなコミュニケーションを自然にできる関係を常に意識し提案していきたいと改めて感じています。




中国からの福祉施設視察団

今日は、中国、北京から高齢者施設の視察に来ていただきました。

いろいろなタイプの施設が希望との事で、最初に町田市の有料老人ホーム「リアンレーヴ本町田」、それから「特別養護老人ホーム縁JOY」、「特別養護老人ホーム片平長寿の里」と見学していただきました。

 

 

 

 

 

日本の高齢者施設は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅等施設の種類もさまざまです。

 

 

外国の方が視察に来ると、どうしても日本の福祉施設事情を伝えるために施設の種類について、その区別についてお話しする事になります。

 

 

そのたびに思う事は、やはり施設の種類が多いと感じてしまいます。

 

 

当事者である高齢者の方々にとっても本当に理解しにくいのでは思います。

 

 

 

 

 

中国の人口は日本の約10倍です。現在日本では超高齢社会と言われ高齢化率は上昇する一方です。

 

 

そう考えると今後は中国でも同じことが言えます。いや、決して同じではありません、規模が10倍になる訳です。

 

 

聞くところによると、中国では介護保険制度のようなものや、施設の整備基準なども現段階では整備されていない状況です。中国では日本よりも親を施設に預けることに抵抗があると言われますが、一人っ子政策による若い世代の減少で、今後はどしても施設の需要が高まると考えられます。

 

 

そのためには保険制度の整備や施設整備の基準など、一定の方向性を決めていく必要があると思います。

 

 

決して日本の制度が正解かと言われればそうでない分部もあると感じますし、その国の文化や地域の特性なども考慮しながら中国独自のスタイルを作り上げられればよいと思います。

 

 

少しでも今の日本の施設事情を知っていただき、中国での施設整備に役立っていただければと改めて感じました。




高齢者のための地域コミュニティー

先日伺った大阪府堺市のOAKcafeの写真です。

 

 

 

特にお昼時はかなり込み合う人気のカフェです。地域の方々がランチを食べにきたり、コーヒーを飲みにきたり、ゆったりとした時間が流れています。

 

 

 

どう見ても、街中にある最近のカフェといった雰囲気で、特別養護老人ホームの施設内という意識はまるでありません。地元の人にも人気のカフェで実は常連客もいるほどです。

 

 

なぜ、これほどまでに人気の場所となっているのでしょうか?

 

 

今までの高齢者施設は、どうしても地域から見て閉鎖的な施設が多く、高齢者が住まう居住空間とデイサービスセンターなどの通所

施設を併設して施設を整備する形が一般的でした。

 

 

いわゆる、高齢者だけの施設という事です。

「多世代交流」というのがこちらの施設のコンセプトの一つですが、高齢者の方々もいろんな世代の方々とお話したり、なにか一緒にイベント事をしたりする事で、話したり体を動かす機会が増えると考えています。

 

 

そうした行動が増える事で、認知症の進行を遅らせたり、体の機能低下を軽減したりできると確信しています。

 

 

だから地域との繋がりやコミュニケーションはとても重要な要素なのです。

その地域には何が不足しているのか?

地域の方々は何を求めているのか?

周辺には何があって、どのような歴史があったのか?

 

などさまざまな角度でリサーチする事で、地域コミュニティーの場所が出来ると思います。

 

 

場所を創るという事は難しいものではありません。でも、その場所が普段から利用される場所、好まれる場所であり続けるという事は簡単な事ではないと思っています。

 

 

 

グランドオーク百寿のOAKcafeが愛される理由はそこにあると思います。

子ども達も楽しみにしているマーケットコーナーには駄菓子や地元野菜、日用品などの販売も行っています。

 

 

 

 

地域の高齢者や入居者にも利用されるPCコーナーもあります。

 

 

また行ってみたいと思える場所とはどんなところでしょうか?

地域が必要としている場所とはどんなところでしょうか?

 

 

今一度、地域を見渡して考えてみる事が大切です。

 

 

 

そんな場所が地域の中で機能すると、それがきっかけとなって、知り合いが増えたり話す機会が増えていくのだと思います。

 

 

全ては、高齢者の方々が笑顔で明るい一日を今日も過ごしていただくように私たちも日々模索しながら提案しつづけていきたいと改めて感じました。




ベルリン視察

引き続きベルリンに滞在し、視察を続けています。

高齢者施設、特別支援学校のあとは幼児施設や学校などを視察しています。

 

 

感性や表現への教育を重視しているシュタイナースクール。

ここは食堂ですが、生徒、保護者、一般の人も利用できます。

独特の空間ですが自然光もたっぷりです。

 

 

カフェのスタッフでダウン症の方を数人見かけました。写真の後ろ姿の人もそうです。

地域の人も利用できて、障害のあるかたも普通に働いている。

日本の普通学校でも特別支援学校でも食堂が開かれていて、こんな光景が見られるようになるといい。

 

 

続いてDIM(Die Imaginare Manufaktur)へ。

ここは視覚障害の方が作るブラシを扱うショップで、ドイツでは視覚障がい者がブラシを

作るのは伝統的な手工業のようです。

 

 

中庭へ抜ける通路にはショーウインドーのギャラリーも。

プロダクトデザイナーと組んでいるだけあってデザインがいいのはもちろん品質もしっかりしています。

 

 

実際に購入したブラシです。

右は革靴磨きのブラシセット。左は家型の洋服用兼マッサージブラシ。

今では視覚障害だけでなく精神障害のかたも多く従事しているそう。

実際に商品説明やレジのやり取りなど接客してくれた方は軽度な知的障害の方でした。

コンパクトな店内はカフェもありました。

(店内と人物は撮影NG。。。)

 

 

工房のパンフレット。

 

 

 

integralという就労訓練の施設。

視察の予定になかったためエントランスで日本から来た事を伝えましたが工房の作業が終わっていたため

カフェだけ見させていただきました。

 

ここでもエントランスで対応してくれた方は軽度の知的障害の方。

電話を取り次ぎ、我々に説明をし、オープンハウスの日があるからその日に来てくれと教えてくれました。

 

ベルリンで障がい者のいる場面にいくつか遭遇し、日本より社会進出が進んでいるように見えました。

一人で対応している場面にはなかなかあいませんよね。

 

相互理解が深まり、役割分担をすれば必ずできるようになるはずです。

 

 

夕方からはドイツ・ベルリンらしい場所もいくつかみました。

これはホロコースト記念碑。

 

 

東西時代のドキュメンテーションセンターへも行きました。

ベルリンの壁があった位置をアートで表現しています。

 

時差ボケして、ドイツにも日本にいもフィットしていない状況ですが、

本日いよいよ帰国です。

 




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