2024年問題と福祉施設の現場

日経アーキテクチュア2024-3-14号の記事です。

いよいよ2024年問題とされる働き方改革として猶予期間がこの3月で終了となり、4月からは残業規制が適用されることとなります。

 

 

(日経アーキテクチュアより)

 

 

残業時間が月100時間、複数月平均80時間、年720時間という上限が設けられさらに45時間を超える月を年6回までに制限されるという事です。

 

 

労働者の働く環境を改善し、働きやすい環境を作っていく事が目的です。

実際に現場所長に話を聞くと、職人さんたちは、土曜日は働いて収入を減らしたくないという意見が多いようで、確かに労働時間で収入が決まっていると、収入が減ってしまうという事になります。

 

 

普段の生活において一定の収入を下回ってくると、逆に生活が苦しくなるという事も考えられます。

はたして労働者の為の働き方改革は、安定した生活を揺るがす事になり、本当に労働者のための改革になるのでしょうか?

 

 

私達がかかわる高齢者施設や障害者施設の建設現場においても少なからず影響はあり、残業が少なくなることで全体工期が遅れたり、それによって人件費のコスト増が見込まれています。

 

 

介護報酬も含めて、施設整備の補助金の増額など、この2024年問題に対する措置は必要になってくるのではないでしょうか?

 

 

特に、福祉施設においても老朽化した建物の建替えは急務になっている事が多く、高齢者や障害者の方々が安心した生活が確保できるように早急な対策が必要です。

 

 

【セミナーのご案内】

2024年3月21日(木)14:30〜「物価上昇局面における施設老朽化対策のポイント」

セミナーに登壇させていただきます。

 

老朽化による施設の建替えは急務となっている中で、建設費高騰時代をどの様に乗り切っていくのか、そんな課題に設計者、施工者、コンサルタントの3者の目線から様々なお話ができると考えております。

 

下記のリンクにて参加申込が出来ますので是非興味のある方はご参加下さい。

コチラ

 

地震の記憶と福祉施設の対策

明日、3月11日は一生忘れる事が無い日です。

東日本大震災が2011年ですから13年という時間が経過した事になります。

 

 

どんな事でも、10年前となると記憶も曖昧になったり、薄れていったり、忘れてしまったりするのが人間です。

 

 

また、地震を体験していない世代も増えてきて、災害の備えなど教訓にすべき事も当時に比べて意識は薄くなってきている事は事実です。

 

今年の元日に発生した能登半島地震で、地震の揺れの怖さと津波の脅威を再認識させられたように感じます。

 

 

(高知県安芸市 ステージ桜が丘)

 

 

少なからず、私達の建築設計という分野においては大きな影響を受ける事になっており、地震や災害が起きるたびにその安全対策が議論され、より安全なものにするために法改正が行われていきます。

 

 

ここのところ、千葉県などでも地震の発生が多く、災害用品がどんどん売れ、食料品などの買いだめで品薄になっている物もあるようです。

 

 

(高知県安芸市 ステージ桜が丘)

 

 

私達がかかわる高齢者施設や障害者施設は、非常時に一人で避難できる方は少なく、少ない職員がなかなかスムーズに避難させる事は難しいと言われています。

 

 

避難する場所や避難経路、手順など、日ごろから意識し訓練している事で、いざ災害が起きた時に慌てずに対応できるようになると思うのです。

 

 

もちろん備蓄倉庫での食料保管はもちろんですが、普段の生活の中で少しでもそうした意識を継続できる仕組みや取り組みが必要になってくるのではないでしょうか。

 

 

災害は起きてからでは遅い、どんな事にでも準備する事の重要性を再認識し、それを継続していく事が重要だと感じます。

 

建設コスト高騰と福祉施設敷地選定

私達がかかわる高齢者施設や障害者施設の設計において、多くの場合、ある敷地があり、そこにどういう福祉施設を建てたいという話からスタートする事は良くあります。

 

 

でも、可能であればその敷地を選定する段階から、専門設計者を入れて検討する事もとても大切な事だと感じています。

 

 

 

 

2024年も3月がスタートしておりますが、依然として建設コストの高騰は続いているように感じます。もちろん建設工事だけが高騰しているという事ではなく、私達の生活の身近なところでも食品や燃料、生活用品など全てにおいて価格の高騰が見られ、それぞれのご家庭でも実感が出来る事だと思います。

 

 

建設コストと敷地選定ってあまり関係無いのではと感じる人もいるかもしれませんが、この物価高騰時代の福祉施設整備においては事業費全体に影響してくる大きな要素の一つになっています。

 

 

 

 

市街地と農地だったらどうでしょう。

公共下水道の整備がされていなければ、汚水を処理する浄化槽の設置が必要です。

 

 

周辺に消防水利が無ければ防火水槽の設置も必要となります。

地盤が悪ければ、基礎工事に費用がかかったり、場合によっては杭工事が発生したりする場合もあります。

 

 

敷地に至る搬入道路が狭ければ、資材を分けて搬入する必要だって出てきます。

このように、様々な条件によって、建設コストに大きく影響が出ているはずです。

 

 

 

 

先日、完成した福井県敦賀市のグループホームも比較的ローコストで建設した事例です。

もちろん、直接建設工事費にかかってくる部分のコスト削減も工夫していく必要があるのですが、前述した敷地選定は大きな比較的多きなコストが動く要素になってくる事も確かです。

 

 

そして建設工事において、こうした建設費の高騰の影響で、なんでも良いから建てるという目先だけの考えでは、結果的にコストがかかり事業著して成り立たなくなることも十分に考えられます。

 

 

ここで生活する高齢者や障害者の居心地や快適性、安心して暮らすという事については削減できない反面、割り切るところは割り切って考えていく事で、豊かな空間を実現しながら全体の事業費を抑えていく事に繋がるのです。

 

 

 

 

皆が集まる食堂からは、畑が見え、遠くには大自然の山々を見る事ができる静かな環境は、そんなにコストをかけなくても窓の取り方や方角、居室の配置を工夫する事で活かす事ができます。

 

 

建設費の高騰時代だから出来ないでは無く、出来る方法を模索し、やり続ける事だと感じます。

 

 

そのような時代背景の中、縁あって「物価上昇局面における施設老朽化対策のポイント」という形で講習会・座談会に登壇させていただく事になりました。老朽化による施設の建替えは急務となっている中で、建設費高騰時代をどの様に乗り切っていくのか、そんな課題に設計者、施工者、コンサルタントの3者の目線から様々なお話ができると考えております。

 

 

下記のリンクにて参加申込が出来ますので是非興味のある方はご参加下さい。

コチラ

 

高齢者グループホームの現場より〜各種検査〜

福井県敦賀市で進めてきました、高齢者グループホームの現場です。

 

 

 

 

工事はほぼ完了となり、各種検査を受けています。

 

 

建設工事が完了し引渡をするまでには様々な検査を受ける必要があります。

建築基準法や消防法においては、建築確認済証を受けた際の図面通りに施工されているか、消防設備については消防法に合致する設備の配置や機能が果たされているかといった検査になります。

 

 

 

 

火災報知設備についても実際に発報するかという事も、非常に機能を満たす上では確認しておく必要があります。

 

 

 

 

その他には、施工者自身の社内検査や設計事務所の社内検査にいては、施工精度の事や仕上がり状態などを中心に実際に高齢者の方々が入居して問題になる事がないかといった事も再確認していきます。

 

 

多少は現場での変更点も出ますので、そうした変更の内容や安全性についても、こうした検査で確認していく事が大切です。

 

 

開所としては3月末日の予定ですが、補助金事業でもあるため、これから市役所の検査を受け、施設認可等の審査を経てようやく開所という運びになります。

 

 

 

 

 

一つの建物が完成するためには、本当に多くの方々がかかわってくれています。

一つ一つの施工する職人さん、現場を運営していく所長をはじめ現場職員さん、外構工事や植栽など様々な方々の協力を得て成り立っているという事です。

 

 

それぞれの工事において、細かいところの議論をしながら、ここに住む高齢者の方々が心地よく安心した生活ができるように完成に向かって頑張ってくれていました。

 

 

私達はその一員で設計監理という立場でかかわらせていただき本当に皆様に感謝です。

高齢者の方々の生活している姿を想像すると、本当に嬉しく思います。

アートが変える障害者福祉

先日、川崎市にある放課後デイやグループホームなどを運営するアイムさんに伺ってきました。

 

 

 

 

障害者の方々を支援する法人さんですが、こちらの放課後デイも、子ども達の遊べる環境づくりを重要視し、ビル内のスペースを工夫し、さまざまな仕掛けを作っています。

 

 

運営しているスタッフの半分が子どもの保護者という事で、当事者の事を理解し強い気持ちで子ども達の居心地を追求していると感じました。

 

 

写真にも写っているこちらの代表者である佐藤典雅さんはとてもエネルギッシュで良い意味での既成概念をひっくり返してくれるような考えをお持ちでした。

 

 

息子さんが自閉症のアーティストである「GAKU」という事で、そちらのアトリエも見学させていただきました。

 

 

 

 

16才から美術館に行ったことをきっかけに絵を描き始めたというGAKUは本当に素晴らしい絵を描き続けています。どの作品も何かを訴えかけているように感じ、ついつい見入ってしまいました。

 

 

 

 

その他にも様々な企業とコラボし、活躍し続ける息子さんはとても力強く、私自身も元気をもらう事が出来ました。

 

 

障害者や健常者という概念を超えて、その人の好きな事を続ける事、そしてその事が評価される事はとても素晴らしい事です。こうして自身の得意とする事をコツコツとやり続ける事、そして人の心を動かせる作品が出来る事。

 

 

こうしたアート活動が人を変え、世の中を変え、障害者福祉という世界を変えていく事になるのでしょう。

 

 

 

 

「GAKU,Paint!」という形で自閉症の息子が奇跡を起こすまでの生い立ちが描かれている本も販売されています。

 

 

GAKUという一人のアーティストに元気をもらった日となりました。

私達もまた、こうした福祉の環境を既成概念にとらわれずに変えていきたいと改めて感じました。